2011年4月 元麻布の家とのお別れ

ハウス・オブ・ロータスとして皆様にも親しんで頂いた元麻布の家ととうとう別れる日が来てしまいました。

十五年前に一目惚れしたこの館は昭和初期のモダンな和洋折衷建築で、当時欧米を風靡していたアールデコのスタイルを早くも取り入れながら、日本古来の厳格な伝統と技術も揺るがせにせず、対照的な魅力を見事に融合させた独特の個性が漲る家で、お雛様や七夕にも、ハロウィーンやクリスマスにもよく似合う懐の深い家でした。太平洋戦争を挟んだ激動の時代を生き抜いた年輪が、その味わいをさらに深め、同じ「混血」の後輩にとって、こんな素適な歳のとりかたをしたいと憧れるほど美しい大先輩でしたし、子供たちにとっては昔のことを教えてくれる頼もしい「祖母」でした。ただ、齢八十ともなると流石にいろいろと不具合が生じるし、夏は虫、冬は隙間風に悩まされるし、地震や火事も怖いし、小さい子供たちを育てるには苦労の多い住まいでもありました。それでとうとう八年前、もっと新しい設備が整った快適な家に引っ越したものの、やはりこの家への未練を断ち切れずに、そのまま借り続け、私の趣味である世界の美しい手仕事の雑貨を紹介するセレクト・ショップとして活用することにしたのでした。店を開くのは不定期だし、自分が好きなものしか置かないし、出産の度にお休みするし、随分とわがままな店でしたのに、少なからぬ方々に御贔屓いただき、品物もさることながら、この家のしつらえや雰囲気を愛でていたたくことが出来たのも仕合せなことでした。子供の頃から「遊牧民」で、数え切れないほど引っ越しを繰り返して来た私が、これほど一軒の家に愛着したのははじめてのことです。懐かしい思い出もいっぱい詰まって、運び出しようがありません。できることなら最後まで添い遂げたいところでしたが、大家さんのご都合で明け渡しを余儀なくされ、したがってハウス・オブ・ロータスもひとまずクローズさせて頂くことになりました。	急なお別れになってしまいましたが、これまでのご厚誼に心からの御礼を申し上げます。本当に有難うございました。いずれどこかで再開する方向で模索しておりますので、またお目にかかる日を愉しみにしております。

尚、弟の桐島ローランドが港区竹芝の倉庫を改造して開設したスペイシャスな写真スタジオを、ハウス・オブ・ロータスが引き継ぎ、内装を一新して運営することになりました。まるでニューヨークのロフトのように透明感溢れる突き抜けた空間に、ロータス的なクロス・カルチャーのスパイスもちょっぴり効かせたスタジオ・ロータスは、東京にいることをふと忘れさせる別世界です。撮影は勿論のこと、イベントスペースとしてもさまざまな可能性が考えられますので、皆様のご利用をお待ちしております。

以上、略儀ながらお知らせし御礼のご挨拶まで申し上げました。

ハウス・オブ・ロータス 桐島かれん

ロータスのはじまり