2009年6月 ロータスのはじまり

6年前、家族と住んでいた思い出深い元麻布の家で、アジアの美しい手仕事の中から私が本当に好きなものだけを選りすぐった、思いっきり我がままなお店を開き、多くの方の共感とご愛顧を頂きました。四人目の子の出産を機にしばらく休んでおりましたが、昨年春、四年間の眠りから覚めて、ハウスオブロータスは再びみずみずしく蕾を開きはじめました。当分は不定期で期間限定のオープンではありますが、ぜひとも皆様にご紹介したい美しく力強い道具や装飾品を集めてお待ちしております。

チベットの箪笥、パキスタンの椅子、ビルマの漆器、トルコの壺、タイの竹籠、イランの敷物、モロッコの履物、中国少数民族の手刺繍布などなど、アジア、アフリカから、ヨーロッパ、南北アメリカにも翼を広げて見つけてきた、人類の宝物と思えるさまざまな優れものが犇めく館です。とりわけ、時代の急流に打ち砕かれそうな伝統美、大量生産の波に呑まれて消えつつある精緻な手工芸、文明の利器に取って代わられる素朴な民具など、失われつつあるものに私は強く惹かれます。ほったらかしては生きていけない子供たちがどうやら手を離れた今、私がしたいことは、ほったらかしては滅びてしまうかもしれない物たちが元気に生きていく道を開き、居場所を作り、人々の暮らしに繋げることです。そのサロンとなるハウス・オブ・ロータスは、麻布の閑静な屋敷町にひっそりと生き残っている築80年のレトロな洋館で、昭和初期の風雅な生活文化の残照を体感できるこの館自体が、まず皆様に見て頂きたい貴重な優れものなのです。

ハウスオブロータスには、みずみずしい大自然に悠々と根を下ろした伝統文化の、強靱な生命力を濃やかな美意識が漲っています。眠っていた遺伝子がふと目覚めるような懐かしい時空間に、皆様のお越しをお待ちしております。

桐島かれん

元麻布の家とのお別れ